「はと急便。その3」私が夜中に考えるのは 他愛もないことだったり 真剣すぎる事柄だったり うれしかったり せつなかったり 本当にどうでもよいことを 延々と考えてるだけのこともあった。 そのうちに私は、 夜中に考えていることを 誰かに知らせたくなった。 そして 夜中に手紙を書き始めた。 メールでも別によかったのだが 具体的に、渡す相手がいない。 芯のやわらかいシャープペンで 「鳩居堂」製の、和紙の便箋に書き付けると 自分の気持ちが 形になったような気がしてうれしかった。 いままで、もわんもわんと 心の中で渦を描いていただけのきもちが 整理できるような気がしてうれしかった。 ただの罫線の引かれた紙の束が いつしか 意味を持つものに変わっていった。 「いつか、これを誰かに出してみたい。」 鳩が手紙を運ぶ夜間便があることを知ったのは この頃だった。 ジャンル別一覧
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